インターエデュから転載
最初に断言します。海外で過ごした経験は、お子さまにとって貴重な財産であるとともに、中学受験においての「アドバンテージ」でもあります。
日本の私立中高は今、グローバル教育が非常に盛んであり、将来、海外を舞台に活躍する素地のある生徒たちを求めています。
このような背景もあり、多くの学校で取り入れられるようになった「帰国子女入試」。出願には条件があり、誰もが受けられるわけではない分、海外経験を持つお子さまの強みが活かせる入試です。
帰国子女入試への理解をさらに深め、お子さまに合ったより良い学校選びをしていただけると幸いです。
■おさらいしよう帰国子女入試について
「海外滞在年数が継続して2年以上」、「帰国後1年以内」というのが基本になります。資格を満たさなくても、柔軟に対応してくれる学校もありますので、直接学校に確認するとよいでしょう。
帰国子女入試は学校によっても、入試日によっても内容が異なります。例えば、英語だけで受験できる学校もあれば、一般入試の中に帰国子女枠がある学校もあります。勉強したことが無駄にならないよう、入学したい学校の試験内容はしっかり確認しておきましょう。
異文化交流や体験を通して自然と身についた積極性、言語スキル、広い視野などを学校は求めています。とくに近年は、グローバル教育に力を入れる風潮なので、海外を舞台に活躍する素地、海外で過ごした経験を持つ人物を学校は欲しています。
※学校によって異なりますので、詳細は学校サイトなどで必ずご確認ください。
学校によって力を入れている教育は異なります。例えば医学部進学に力を入れていたり、英語教育に比重を置いていたりさまざまです。ある程度はウェブサイトやパンフレットで分かりますが、気になる学校には直接聞いてみましょう。
私立中高には建学の精神があり、それぞれ違う「校風」があります。校風とは、人に例えると個性のようなものです。先生・生徒の雰囲気、校舎や設備、カリキュラムなど色々なところに表れてきます。資料だけで判断するのは難しいので、できるだけ実際に足を運ぶことをおすすめします。
最寄りの駅からの距離、校舎・グラウンドの設備など、見るべきものが満載です。部活に力を入れたい場合は、運動設備。勉強に力を入れたければ、図書館や自習室の有無などを見ておきましょう。
■サポート次第で大きく変わる
帰国子女入試で親がするべきことは?
一般的に、中学受験は親の関わり方・サポートが重要と言われています。帰国子女入試の場合も例外ではなく、親のサポートが受験に大きく影響します。ここでは、親がするべきことを、ポイントごとに見ていきましょう。
1年~2年ほど前
学校情報収集
情報サイトや本・学校パンフレットなどを使って情報を集めましょう。学校はかなりの数がありますので、お子さまの将来像と照らし合わせ、通わせたい理想の学校イメージを固めていきましょう。
6月~
学校説明会などのイベント参加
私立中高では年間を通し、学校説明会以外もイベントを行っています。海外にいる場合、日本に何回も来ることが難しい方も多いと思いますので、ある程度絞り込んでおきましょう。
9月~
願書取り寄せ
海外から出願する場合、在留証明や帰国枠受験の資格を証明するための書類など、準備するものが多くあります。さらに受験校によっては用意するものが増えてくる可能性もあるので、早めに確認しておくことをおすすめします。
10月~
帰国の手配
帰国する便をおさえましょう。また、首都圏の学校を受験する場合、1~2月は、ホテルやウィークリーマンションが混雑します。受験スケジュールが確定したら、早めに予約をしましょう。
11月中旬~
受験当日
帰国子女入試は、早い学校では11月中旬から始まります。時差や温度差を考慮し、遅くとも1週間前には帰国しましょう。
■ポイントをしっかり解説 試験はこんな内容!
帰国子女入試は、大きく2つに分けることができます。
① 一般試験の中に帰国子女枠を設けて一般生と同じ試験で選抜
② 帰国子女のために特別な日程を組み、帰国子女のための入試で選抜。
文面からも伝わると思いますが、この2つは学校側の温度感がまったく違います。②の場合は、帰国子女にたくさん入学してほしいという思いから設けられていますので、積極的に活用すべきです。
一般枠と比べ、レベルが下げられる傾向にありますが、その程度は学校によって様々です。この試験を受ける場合は、日本の中学受験生と同レベルの学習量が必要になってきます。
英語の学習は過去問を入手し、出題傾向に沿った学習が効果的です。日本の試験では、現地で学んだ語学力だけでなく、文法や文章表現としての英語の力を身につけておく必要があります。
この試験は主に現地校やインター校に通っている生徒が対象になります。エッセイは高い語彙力・文章構成力が要求されます。問題の例としては「あなたが日本の首相になったらまず何をしますか?」のような、発想力を問われるテーマが多い傾向です。
4教科の基本的な学習をし、作文の練習などをするようにしましょう。適性試験は主に公立中高一貫校で行われている、思考力を問われる形式のもの。まずは基礎的な知識や教養を押さえるのがベストです。面接で重要なことは、今までの経験を活かし、自分なりの答えを言えるかどうかです。
ena 国際部渋谷校
松嶋 哲 校長
指導歴28年、ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、デュッセルドルフ、ロンドンで校長を歴任した経験を生かし、中学入試から大学入試まであらゆる帰国生入試に対応したきめ細かい受験指導を行っている。
まず帰国子女入試の現状はどうなっているのか教えてください。
海外で生活する子供の数は、義務教育段階の子供に限定しても8万人近くおり、そういった子供たちのうち1万人以上が毎年帰国しています。帰国子女受験をする生徒も増加傾向にあり、こういった受験生の増加は、帰国子女入試においても、様々な変化をもたらしています。
例えば、帰国子女入試を積極的に実施する学校が年々増加していることもその一つです。このような帰国子女入試実施校の増加は、受験生の学校選択の幅を大幅に増やすこととなり、受験生に多くの恩恵をもたらしています。また、入試日が年々早まっていることも最近の特徴です。特に中学入試では11月下旬に入試がスタートするため、最終の試験日となる2 月上旬まで、2
か月以上試験期間が続くことになります。その結果、受験日が重なることが減り、多数の学校の受験が可能になりました。一方、入試問題は難しくなる傾向にあります。実際、最近の入試問題を見ると、難易度において一般の入試問題と大差ない学校も多くみられます。さらに、入試制度も多様化しており、「グローバル入試」のような、帰国子女枠ではないが帰国生も受けやすい入試方法を行う学校も増えています。
帰国生に「海外で学んできてほしいこと」は何でしょうか?
現在のようなグローバル化社会において、外国語を駆使する能力は不可欠です。海外では、外国語によるコミュニケーション能力(聞く・話す・プレゼンテーション・ディスカッション能力)をしっかり身につけてきてほしいと思います。このようなコミュニケーション能力をつけるには、現地校やインターナショナルスクールでの授業に真剣に取り組むことが一番の助けとなります。また、海外での滞在国やその地域の歴史や伝統、文化をできるだけ多く学んできてほしいと思います。同時に、日本との違いや共通点も考えてみてください。異なる歴史的・文化的背景や価値観を学ぶことは、グローバルなものの考え方を培うために非常に重要です。海外で体験したことや考えたことは、その時は新鮮でも、しばらくすると忘れてしまいます。忘れないうちに、何かに書き留めておくようにしましょう。
最後にこれから帰国子女入試を受けようと考えている親御さん・お子さまへアドバイスをお願いします。
出来るだけ早い時期に目標とすべき学校を決定しましょう。受験に対する意識を高めると同時に、今何をやるべきかということを明確にすることができるからです。そのために、やらなければならないことは情報収集です。これは、学校に関する諸々の情報だけでなく、自分に関する情報も含みます。学校に関する情報収集をするときは、ネットから得られる情報だけに頼らず、実際に学校に足を運んでください。直接学校を見ることで、その学校が本人に合った学校なのかどうかをより確実に判断することができます。また、公開模試を受験する機会をできるだけたくさん設け、自分の現在の力を知ることも重要です。こうして集めた情報をもとに目標校が決まれば、次にやるべきことも自然に見えてくるはずです。そして、やるべきことが明らかになったら、それを行うことに集中しましょう。合格するための無駄のない最も有効な学習をすること、すなわち「正しい努力をする」ことが重要です。